読書ブログ「『雨の日の心理学 こころのケアがはじまったら』」近江デジタルキャリア草津駅前オフィス 就労継続支援ブログ20260801
『雨の日の心理学 こころのケアがはじまったら』東畑開人
東畑氏は、こころのケアに関わる心理学を三つに整理します。
ひとつは、自己啓発本や子育て指南、部下育成の本などに代表される、心が元気なときに力を発揮する「晴れの日の心理学」。
ふたつめは、精神科医や臨床心理士など専門家が用いる「専門家のための心理学」。
そして東畑開人氏の『雨の日の心理学 こころのケアがはじまったら』が扱うのが、三つ目の「雨の日の心理学」です。
子どもが学校に行けなくなる、部下が突然会社に来なくなる――そんなとき、晴れの日向けの「頑張ったね」の一言は、届くどころか相手を傷つけてしまいます。
かといって、誰もが専門家に頼れるわけでもありません。
実際、こころのケアの大部分は、専門家ではなく私たちのような素人が担っているのが現実です。
本書は、そんな「雨の日」に、専門家にならずとも何ができるのかを、平易な言葉で手渡してくれる一冊です。
著者の東畑開人氏は臨床心理士・公認心理師です。京都大学大学院で博士号を取得後、精神科クリニックや大学での勤務を経て、現在は白金高輪カウンセリングルームを主宰しています。
本書は、東畑氏が主宰する2023年度のオンライン授業「心のケア入門――支えることのための心理学」全5回を書籍化したもので、こころのケアとはなんだろうかという問いから始まり、聞くこと、わかること、おせっかいをすることへと、5日間の授業形式で進んでいきます。
自分の体を労って休む、誰かに温かい言葉をかける、気にかける、話に耳を傾ける、温かい食事を出す――そうした特別でもなんでもない、日々の何気ない振る舞いこそが、私たちが普段行っている「晴れの日のケア」の正体です。
本書は、その延長線上にある「雨の日」への対処法を、専門家でなくても実践できるかたちで教えてくれます。
本書で印象的なのは、「ケア」と「セラピー」という二つの関わり方が明確に区別されている点です。
ケアとは、相手の「こうしてほしい」というニーズに応答すること。
学校に行きたくないと言う子どもを休ませる、ひとりで登校したくないと言われたら一緒に行く、雨の日に送っていく――そうした、相手の望みにまっすぐ応える関わりです。
一方セラピーは、なぜ学校に行きたくなくなったのか、その奥にある傷つきそのものと向き合い、満たされないニーズや生き方そのものを見つめ直していくための、より踏み込んだ関わりを指します。
そして東畑氏は、両者には順序があると説きます。
まずケアが十分になされて、相手が安心できる土台ができて初めて、セラピーは有効になると。
この整理は、誰かを助けたいと焦るあまり、いきなり核心に踏み込もうとしてしまう私たちに、立ち止まる理由を与えてくれます。
もう一つ心に残るのが、「きく」ことをめぐる章です。
東畑氏はこれを「ゼリーをやりとりする技術」と呼びます。
人が抱える不安や混乱は、輪郭のはっきりしない、崩れやすいゼリーのようなもの。
それを無理に形にしようとしたり、アドバイスという型に押し込めたりせず、崩さないように、そっと「預かる」こと――それがきくという行為の本質なのだと本書は説きます。
この技術には、いくつかの段階があるといいます。
まず、相手の心からあふれ出したゼリーを、聞き手がひとまず預かること。
それだけで、預けたほうのこころはいくらか軽くなります。
次に聞き手は、預かったゼリーを自分なりに理解し、「〇〇だったんだね」というかたちで相手に言葉を返すことがあります。
それを受け取った相手は、「自分はそういう気持ちだったのかもしれない」と、自身のこころに気づいていきます。
話を聞くことは、問題そのものをすぐに解決するための手段ではなく、それ自体が相手を支えるケアの営みなのだと本書は説きます。
誰かの思いを受け止め、言葉とともに返していく営みそのものが、相手のこころを支える力になるというのです。
さらに興味深いのは、この過程が聞き手の側にも影響を及ぼすという点です。
相手の混乱したこころを預かるとき、聞き手にもまた、相手の混乱や無力感のようなものが伝わってくることがあります。
こうしたやり取りは、雨の日のこころをひとりで抱え込むのではなく、他者とのあいだで少しずつ分け持つことでもあります。
だからこそ、「きく」ことは受け身に見えて、実は大きな労力を伴う行為なのだと東畑氏は語ります。
問題そのものを解決するわけではなくても、相手のゼリーを受け取り、ともに抱えること自体が、こころを少し軽くする――本書はそう教えてくれます。
この指摘は、私自身の経験とも重なります。
会話をするだけでは、問題そのものは解決しない――私はこれまでそう考えてきました。
それ自体は今も変わりません。
しかし、話す・聞くという行為そのものに、こころを軽くする力があるということは、私にとって新鮮な発見でした。
誰かに話を聞いてもらったあと、抱えていた重たいものを少しだけ相手に預けられたように感じることがあります。
本書でいう「ゼリーを預かってもらう」とは、こういう感覚なのかと腑に落ちました。
問題を解決することと、誰かの心を支えることは、必ずしも同じではない。
そのことに気づかされた読書体験でした。
『雨の日の心理学』は、専門的な知識を求める人だけでなく、日々の暮らしの中で誰かのこころに向き合う、すべての人に開かれた一冊です。
晴れの日には気づかなかった関わり方のヒントが、この本にはたくさん詰まっています。
身近な人の「雨の日」に、何をすればいいのかわからず立ち尽くしてしまったとき、本書はきっと、最初の一歩を示してくれるはずです。
【今回のブログ記事はODC利用者さんがライティングして下さいました】
「近江デジタルキャリア草津駅前オフィス」はJR草津駅前にある、PC・事務系作業に特化した就労継続支援B型事業所です。自立した社会生活の実現を目指して、事務職・IT職での企業や自治体への就労へ向けての第一歩を踏み出すお手伝いをいたします。利用者様へ個々の特性を踏まえながら役割分担・指導することで、やりがいを持って取り組んで頂いております。仲間をどんどん増やし、「経済的自立」を目指して月工賃を高めながら成長のサポートを全力で行っています。
ぜひ一度、「近江デジタルキャリア草津駅前オフィス」をご見学ください。
職員一同、皆様のお越しをお待ちしております。
【見学・体験のご案内】
精神障がい・知的障がいをお持ちの皆様、支援機関の皆様のご見学・ご体験を実施しています。
まずは、上記連絡先までお気軽にお問合せくださいませ。
◎受付時間:10:00 ~ 17:00(平日月曜日~金曜日)※土日休
【このような方はお問い合わせください】
・就職活動に不安がある
・就職活動に向けてしっかり準備したい方
・ビジネスマナーを身につけたい方
・黙々と作業に集中してみたい方
・人とのコミュニケーションが苦手な方
・デスクワークの仕事を希望している方
・障がい者手帳をお持ちの方(精神/知的など)
・事務職での就労を目指している方
・日中活動場所として事業所を探している方
・自己管理力・自己理解力を高めたい方

■事業所内では、感染症対策や衛生管理を十分に行った上で、来訪者様をお迎えしております■
来訪時には、マスクの着用・手指アルコール消毒・検温をお願いすると存じますが、
ご理解のほど何卒宜しくお願い申し上げます。
びわこホーム株式会社グループ 株式会社まごころ 就労支援事業
就労継続支援B型事業所 近江デジタルキャリア 草津駅前オフィス
指定番号:2510601061



